同級生のトム・クルーズが、3月3日に『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』で、ゴールデンラズベリー賞最低男優賞を受賞した。毎回あんなに体張って頑張っているのになんともお気の毒。今回、展開が展開で、随分粗っぽかったからねぇ〜って、そんな話ではない。このところ、自分の言葉の荒さに、トム・クルーズになりたくないと思ったのだ。
 そこで今更だが、Blu-rayディスクで「レインマン」を購入した。なぜ今頃急に「レインマン」かというと、僕がトム・クルーズになってしまいそうだから、戒めのつもりでの購入なのだ。
 高級車ディーラーのチャーリー(トム・クルーズ)は、車を差し押さえられ破産寸前。そんなところに勘当された父の訃報が届く。父の遺産が入れば、倒産の危機から逃れられる。そう思ったチャーリーは故郷に戻る。しかし、300万ドルの遺産は、すべてチャーリーの兄であるレイモンド(ダスティン・ホフマン)に送ることになっていた。見たこともない兄の存在。しかもレイモンドは、自閉症で施設に入っていた。なんとか遺産を手に入れようと、誘拐まがいに兄を施設から連れだし、ロスへの旅をはじめるのだった…。
はじめは金目当ての兄との交流が、徐々にチャーリー自身の心を開かせ、忘れていた愛情を取り戻していくという感動のロードムービーだ。
 公開された1989年当時、人気絶頂のトム・クルーズが、最後、愛情を取り戻す作品とはいえ、自閉症の兄に対して随分ぞんざいな物言いだと思っていた。そこで、当時仕事がうまく出来ない部下達へキツイ言葉をかけないようにと常に心の片隅に「レインマン」を置いて、そうならないよう心掛けていた。
 あれから、(約)30年。おいおい、きみまろか!
そんなこともすっかり忘れていた。まぁ、そもそも、今、部下いないし。(これは、余談)
認知症を患い、一人暮らしをしている母。このところ、約束したことはすべて却下され、頼まないことだけは必ずする。こちらがよかれと思ったことは、もれなく無にすることに苛立っていた。妻からは、「認知症の人は、そういう判断ができないの。だから、三歳児だと思ってみていないと心が折れるよ。」と言われる。そうは言われても、実の母が、と思うと感情のコントロールができない。毎回、実家を訪れ、あれこれしてくるのだが、その後どうしても小言を言ってしまう。いやな気分だが、止められない。そして、帰りの車の中はどうしようもない嫌な気持ちが充満したまま家に帰る。とても、映画を見たり、どっかに立ち寄ってなんて気分になれない。このところ、ストーブを壊したり、新聞を複数取ってみたりとトラブルが多く、処理をしに行く機会が増え、そのたびにこの思いをする。
考えられない母を責めてもなにもならないが、言わずにはいられない。そして自分にはそのダメージだけが毎回蓄積されていく。
「病院へ連れて行かないと」「薬はちゃんと飲ませてますか?」「みなさん、どなたもそうですよ」と言われると返すことばもない。
「母さん、しっかりしてくれよ」と言いたくもなる。このままでは、母の前に僕自身がアウトになりそうだ。
そんな時、って、先週だが、「そうだ、レインマンだ!」とまるで、JRの京都へ行こうCMのようにふっと思い浮かんだのが「レインマン」だ。見直して、チャーリーのあのキツイ言動を見て、こうならないよう、自分の戒めにしよう。そして、ちょっと救ってもらおう。そう思って、何度も見ることができるようにレンタルでなく、購入したのだ。
あれから30年という年齢を重ね、いい年こいて、どんな状況であれ、反省を忘れて暴言を吐くべきでない。年齢的には、誰がみても大人なんだから!とトムに諭してもらおう。そう思ったのだ。そして、トム(チャーリー)みたいにならないぞ!とBlu-rayディスクを入れ、鑑賞。
ん、なんだ。そもそも、レイモンドって、これ自閉症なのか?今だとそういう見立てなのだろうか?(あ、これは関係ない感想だ)30年前見た時、チャーリーの言葉はすごくキツくていやだったのに、そうでもないぞ。違う、30年前見た衝撃と全然違う。僕は、映画途中までトム(チャーリー)が、すごく嫌な奴で大嫌いだったのに、なにが違う?しばし、自問。
そして、愕然とする。
作品は、変わってないのだ。変わったのは、自分だ。30年前は、こんなこと言えないやと思って見ていたのに、今やそれをまさにやっているから、責めていることが日常化し、きつく見えない自分になってしまっていたのだ。ショック!
今回、トム・クルーズ(チャーリー)になりたくなくて購入した「レインマン」は、僕がとっくにトム・クルーズを越えてしまっていたことを教えてくれた。
戻れるのか、僕は、チャーリーのように…。
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