聖母エビータ。第一次世界大戦前のアルゼンチンの大統領夫人、エバ・ペロン。僕らは近代の世界情勢にはとてもうとい。「母をたずねて三千里」のマルコがやってきた港がブイノスアイレスであることとあのマラドーナがいたサッカー王国だと言うイメージしか持ち合わせていない。 そもそも、近代は日本の侵略のためだけの時代みたいなもんで、歴史の時間もあっと言う間に過ぎ去ってしまう。まるで、子供とテレビを見ているとき裸のシーンが出てあわててチャンネルを変えるみたいに。ってな訳でこの映画にふれるまで、エビータもアルゼンチンの歴史も知らなかった。 85年までのマドンナは好きだったが、それ以後変にムキムキでエロになっていったので、興味もなかった。それどころか、ハリウッドの人々同様、キライな存在だった。 しかし、バンデラスとのセピア色のポスターを見てて気になってしょうがなかった。 冒頭のレクイエム。悲しみが限度を超え、嗚咽のように聞こえる大音量で、結構こたえます。と、そこから心地よいアコースティック・ギターのイントロが聞こえ、バンデラス登場!ここまでのあらすじを歌って紹介してくれるのだが、ソフトな歌声でとっても上手なのだ。小細工せず、音符をまるで台詞のごとくに覚え、タイミング良く発しているようだ。あの濃い雰囲気はなく、実に清々しい。あまりにさっぱりしていて意表を突かれた。 もともとミュージカル作品らしく、歌にあわせたテンポはバッチリで、ミュージカルなど好きな私はすっかり虜になってしまった。少女エバが、男を変えながら力をつけていく様とポイポイと捨てられていく男達の歌は、コミカルでありゆっくり進行していた最初の場面から脱皮するつなぎの役目を果たしており重要な曲の一つだ。 大統領夫人となって、宮殿?から詰めかけた市民に♪泣かないで〜アルゼンチンの人々よ〜なんて歌うシーンは見せ場で、とても美しい。やっぱり、マドンナはとんでもなく歌が上手だと認識させられた。この曲に参り、サントラ盤を買ってしまった。(もちろん全編いい楽曲がそろっていましたが)まるで、ロミオとジュリエットの愛の詩のシーンのように、出来た位置構成、カメラワークで、マドンナでなくともこんな場所で歌ってみたいと思わせる素晴らしいシーンでした。 結局エビータは、竹下登のように後先考えず、金庫からただ金を出しバラマキ行政を行った人のようでしたが、後者と違い売名行為ではなかったようです。この映画を観て、なるほどエビータってこういう事をしてたんだってことはなにも解らないけどセピア色がとても印象に残る美しい映画です。

4.0