子どもたちより一足早く、人生の夏休みもらったので、自由研究しなければと思いつつも、あまりの暑さに断念ちうだった。
そんな折、友人が、ミツバチの巣箱から採蜜をするから手伝いにおいでと誘ってくれた。
朝8時、巣箱を設置しているご夫婦、僕と妻、丸森の養蜂家の先生、お子さんが昆虫と植物好きだが、大学の専攻は海洋生物だという息子さんがいるご婦人の6人で採蜜作業を開始する。
「(蜂は)動かなければ刺しません。僕は、普段は素手で作業しますから大丈夫ですよ。」と、先生。
「寄ってきたハチを払おうとして、手で振り払おうとすると余計集まってくるから、その時は動かない。そうすりゃ大丈夫」
そう言って、ここの主人は真っ白な麦わら帽子と一体化した宇宙服のような格好に着替え始めた。
「この前、2回刺されてさぁ、失神しちゃってさぁ。いやぁ、はじめてだったけど、失神も気持ちいいね。で、これ、買ったの。」と嬉しそうに話す。って、オイオイ。
そしたらご婦人が「この前、私も刺されたけど、(蜂が逃げなかったので)そのまま家に帰って子供に見せたのね。(昆虫好きの子どもが)喜ぶと思ったからそのまま帰ったのに、(子どもは)『ウッ、キモっ!』だって。でも、針と一緒に取れた蜂のお尻の肉を興味深く見てました。でも、そのあと結構腫れて痛かったです。」
先生も「そうでしょう、その痛み2週間くらい取れないんだよね。」って、オイ!
さっき、素手でも出来る作業って言ってたの誰だ!とビビる。なんせ、僕だけが初心者だったから。
みんなは笑顔で、「そんなにビビりますな。全然怖くないから」って、もう充分怖いわ!
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と、言いつつも余裕のVサインを見せてみる。

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さぁ、これが巣箱ちゃん。蜂たちの玄関は、一番下だけ。高さもギリギリで、余裕無し。大きな外敵に攻め込まれないためだ。
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魔法の煙を準備中。
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魔法の煙の準備ができるまで、上の蓋を外し、余計な所にまで作ってしまった巣を撤去する。さすが、大家さん。
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魔法の煙が開戦の合図。わぁだの、ギャーだの、わめいているのは僕だけで、みんな冷静に仕事をこなしている。
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この魔法の煙は、蜂がもしかして山火事?!と思い、幼虫を守らなきゃとか、もう無理と自分の身を守ろうとする本能に基づく行動を利用するんだそうです。つまり、命が大事で、お前ら蜜泥棒なんかかまっている場合じゃないよ〜ということなんだそーです。
なので、蜂の飛行ラインを開けておけば、刺されないということですが、ほら、飛んでるでしょ!
あの怖い羽音が、♫ブン、ブン、ブン、ハチが飛ぶ〜 じゃないのよ。ぶぶぶぶブン〜ぶぶぶぶブーンの大合唱。信号待ちで止まっている暴走族の威嚇音とは、レベルが違うのよ。ハチが寄ってきているわけじゃないのに、その羽音に本能的に反応して顔の前で手が来るな来るなとしそうになるのだけど、「手、手!」と手を使っちゃダメよとみんなからチェックが入る。

巣箱は3層。まぁ、3階建てになっていて、ざっくり言うと1階が玄関とリビング(といっても、彼らはサボらないそうですが…)、2階が幼虫たちの託児所と蜜貯蔵庫。3階も蜜の貯蔵庫になっているそう。
あのハニカム構造(正六角形)のちっちゃな部屋がぎっしり隙間なく並んでいる。

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オイオイ、俺たちの蜜をどうする気だ?!怒 などという声は聞こえてこないが、羽根を震わしながら巣にしがみついたハチたちがザワザワ動いている。しっかり蜜を充填終わるとしっかり蓋をしてしまう。写真でいうところの右下のあたりにハニカムが見えないのは、しっかり蓋がしてあるからだ。
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新鮮な蜂蜜採取をしているのだが、このスタイルは、宇宙人か、人に言えないような危険な化学兵器の調合、もしくは放射能漏れした所に果敢に入って行く人にしか見えないのが難点だ。といって、白をやめて黒っぽい格好にしたら、クマだと思われて一斉攻撃、ハチの巣にされてしまうのだから、そういうことなのだ。

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作業は進み、2階に移る。ここはさっきと色が違う。蓋されているところはサナギが眠っている場所。
働きバチの寿命は、約1〜2ケ月。卵から幼虫〜サナギを経て、3週間くらいで成虫になるそうだ。成虫になると、
  1〜  3日 巣内の清掃作業
  4〜10日 卵の世話
11〜20日 巣作りや巣の防御(敵や他の蜜蜂の侵入を防ぐ)
21〜30日 蜜を集めに行く という一生だそうです。 
女王蜂は、1日2000個の卵を生み、このサイクルを繰り返していきます。
ちなみに働き蜂は全てメス。
え、だって女王蜂だってメスじゃん。女王蜂もそんな寿命少ないの?と思ったら、なんと5〜6年も生きるんだとか。1日2,000個も卵産み続けるなんて重労働なのになんで長生きなのと思ったら、その秘密はローヤルゼリーを食べてたから。
え、蜂って、みんなローヤルゼリー食べてんじゃないの!と思ったら、食べていいのは女王だけ、なんだって。幼虫たちは、花粉を食べて育つのだそう。
あるタイミングで、この子は次期女王になるわねという卵を、子育て担当の働き蜂が、王室という特別な場所で育て始める。ローヤルゼリー食べながら、ね。
ここで、疑問になるのが、あれ、蜂は女系家族なの?って、思って聞いたら、ちゃんとオス蜂っているんだって。どれ?って、教えてもらえなかったけど、約20000匹いるこの巣の中でも100いるかどうかぐらいなんだって。で、なにしているかというと、若い女王蜂が成長すると外に飛び出すんだそうだけど、その時一緒に飛び立って、交尾するためにいるんだって。
幼虫を育てるでもなく、蜜を運ぶでもない。なーんもしない。髪結いの亭主かぁ。(って、偉そうに僕も言えないけど…)
でも、秋以降は花が少なくなるから、新しい女王蜂が巣立つ事もない。さらに花が少ないので食べ物も無くなる。働かざるもの食うべからず。朝ドラ「半分、青い。」でも、離婚して実家に戻ってきた鈴愛が言われてた。
そんなわけで、冬には役立たずのオス蜂は、食事ももらえず追い出されるんだって。また、新しい女王蜂と交尾できなかったオス蜂も帰る家は無いし、交尾したオス蜂だって、死んじゃうらしい。仕事も、居場所もない、オスの置かれた現実は、過酷だ。
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ギョエー!
こうやって枠外に作られているハニカムを削っていく。そして、目をさらのように探している。「何、探しているの?」と聞くと、「女王蜂探しているところ」との返事。そして、しばらくして、「いたいた、いた!」と歓喜の声。
お腹が大きい、たしかに大きい蜂が女王蜂。でもさぁ、真剣に探さないとなかなか見つけられない。
「ねぇねぇ、これ箱の出し入れとかで、間違って潰したりすることってないの?」って聞いたら、「そんなことしたら、大損害。泣くに泣けないよ。だから、慎重に、慎重にやっているんだよ。」
そして、もう一つの喜びが。先生が「これ、王台(新しい女王蜂の幼虫の寝床)ですね」と言った。そして、「様子を見ましょう。順調に育つなら、もう一つ巣箱必要になりますね。」とも。
蜜蜂たちの蜜も残しておいて、家賃分の蜂蜜をもらって、巣箱の仕事は終了。
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蜜蓋でしっかり蓋されていた蜜を取り出す遠心分離機にかけてもこの蓋が邪魔になる。なので、ナイフで蓋を外さなければならない。深く切らないように浅くこそげ取るように切って行く。
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僕も体験。うーん、難しい。この後、遠心分離機にかけるとグングングンと蜜が出てくる。おー凄い凄いと見ていたが、働き蜂1匹が運ぶ蜜の量はティースプーン1杯分くらいとか。そんだけ〜と驚いた。そして、蜂蜜は一滴もこぼさず食べようと思った。
採れたハチミツは約1ヶ月で結構いい量。そして、透過度が程よい綺麗な色だった。先生曰く、「この時期はソバの花から蜜を取ってくるから黒っぽくなるんですよ、普通は。でも、とっても綺麗な色ですね。」
「えっ、先生。だって、ソバの花って、真っ白でしょう。なんで、蜜黒くなるの?」と聞くと、「不思議でしょう。でも、この時期は濁るんですよ。でも、これは綺麗だな〜。」とのこと。白い花と思っても蜜の色が黒いとか、また面白いネタを仕入れたところで、お仕事完了。
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終了後のご褒美は、自家製パンで作ったホットドッグとtheハチミツなデザート。イチジクのコンポートの上に乗った雪のような口溶けの蜂蜜のアイスが絶妙。上品な甘さが口の中に広がる。朝ドラ「ひよっこ」の青天目(なばため)澄子じゃないけど、「うんめぇ〜」と思わず叫んでしまった。